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日付:2018.08.18 更新日:2022.04.19
足関節捻挫後遺症の関節可動制限解除の考察(3)│静岡県 富士宮市 若葉治療院 本院
目次
●関節可動域制限につて
前回は、関節の可動域制限について、解剖学・全身の運動連鎖の見地から書いてみました。
今回は、生理学的な見地から、思うことを書いてみます。
以前、福島から勉強にきてくれた接骨院の先生から、
「先生の突き指を治す動画で、なんで、打球が当たって動かない突き指が、
首に鍼を打って動くようになったのか?・・・あれがどうしても解らない。」
そんな質問をいただきました。
“ 打球が指に当たった ” 各論で言えば、外傷の内容から考えても、指と首に繋がりはないのですが、
『 脊髄反射 』 のような、生理学的な見地で考えると・・・どうでしょうか?
■古い捻挫後遺症の足首の痛みを、首に鍼を打って除去する動画
『一年近く前に挫傷した足首の捻挫。腫れや熱感は治ったものの、足首を回すと痛む部位がある。』
よくある捻挫の後遺症です。試しに、足首に触れる前に、首の所に一本、鍼(はり)をうってみました。
足首とは全く関係ない所(首)に鍼をうったのに、痛みが消失しました。
なぜ?首に鍼をうって、足首の痛みが消えたのでしょうか?
最初は、僕にもわかりませんでした。
覚えている限りでは 2014年の4月には解りませんでした。
ただ、首に鍼をうったら、ボルトが20本入った足首が大きく動くようになった。。そんな感じでした。
〈参考記事〉 足首関節の可動域制限と頸椎の関係 2014‐04-08
2015年 3月の治療記録では、激しい膝の痛みで歩行が困難な患者さんに対し、
首にアプローチを行って改善しています。この頃には、何で首にアプローチすると
膝の激しい痛みが改善するのか?理由は解っていないけど、“ こうなるだろうな ”と、
結果に結びつく確信をもってやっていました。
上記、どちらのケースも共通点は、「首に異常な痛みがあった」 こと。
首と局所との関係があろうと、なかろうと・・・・全ての痛みは除去する対象です。
同様の症例は、何年も毎日のように続き、それらを診ているうちに、自分の考え方が変わりました。
それは、「なんで首の痛みを治すと、局所に変化が起きるのか?」ではなく、
「なんで、局所に激しい痛みが生じると、首に激しい痛みが出るのか?」・・・そう考えると答えは見えてきます。
脊髄反射による防御反応だと思います。
補足)脊髄反射とは、例えば、目に虫が入ったときに、無意識に目を閉じる、不意に熱いモノに触れた時、無意識に手を引っ込めるなど、刺激を受けた感覚神経がインパルスを脊髄に送り、これが運動神経に伝達されて反射が起るなどの生理的な現象を言います。
そう考えたときに、 打球が当った指と首に ・・・「繋がりがない」 そう言えるでしょうか?
同様に、足関節捻挫と頸椎に 「繋がりがない」 そう言えるでしょうか? ・・・ 言えないでしょう?
突き指だけに限らず、カラダに激しい痛みが生じた時に、そのインパルスは脊髄に伝わり、
脳で意識をしない脊髄反射のレベルで、筋肉にフィードバックが起きる。私はそう考えます。
反射が起きるなら、反射が起きた側から反射を起こせば何かが変わる。私はそう思います。
足関節、膝関節、手の指を故障した時、シーネやテーピングで固定する処置は、
常識のように世界中で行われています。
しかし、本気で固定しようとするならば、局所の固定だけに留まらず、
頸椎、および胸椎まで固定する必要があります。
〈参考記事〉 走る時にあごをあげない 2018-07-28
足関節の捻挫を例に話せば、腓腹筋が二関節筋である限り、また腸脛靭帯が多関節筋である限り、
足関節を本気で固定するなら、膝関節や股関節を始め、腰の関節まで固定する必要があります。
それを最も効率よく実行できるのが、体制防御反射による脊椎のロックではないでしょうか?
ですから、局所の損傷が治り、炎症が治まった後でも残っている背骨のロックが見られるならば、
足首の関節を含め、全ての関節は完全には動きません。足首の捻挫でも、
正しい背骨のモーションを回復する事は有効な治療手段と私は考えています。
人のカラダに、異常な痛みが生じたとき、防御反応として優先して守る場所はどこでしょうか?
憶測ですが、生命維持に欠かせない順として、
・延髄周辺(頸椎や甲頭骨)、
・胸椎(心肺機能や自立神経系が集まっているので)、
・頭蓋骨周辺(蝶形骨結合、ラムダ結合、咬筋や側頭筋群)ではないでしょうか?
症例1) 腕を上げたときの肩の痛みを、頸椎と側頭部にアプローチして改善する。
競技はチアダンス、高い所から落下して肩を打撲、骨折はなかったものの、
一か月以上経過しても、腕を上げると肩に痛みが出る。
※腕を上げる為には、肩甲骨と鎖骨が上げられることが必衰になる。鎖骨を拳上させる斜角筋群は、少し特殊な筋肉で、顎二腹筋と結合する。顎関節が正常に動かなければ鎖骨は正常に動かないので、咬筋や側頭筋にまで気を配るべきである。人のカラダの持つ生理的防御機構は、このように損傷した部位の可動を制限し、局所の回復を図るのだと思う。
症例2) 肩甲間部の激しい痛み。
肩甲間部に痛みがあり、首を動かしたり、カラダを捻ろうとすると痛む。
踵骨(かかとの骨)をモビライズする事で、肩甲間部の痛みが消失した。
このように、カラダは連動している。運動連鎖の法則は、解剖学的なつながりだけに留まらず、
生理学的にも影響を及ぼし合う。
人のカラダのデザインは、実に良くできている。私達は、人のカラダのデザインを変えることはできない。
ただ学び、理解するだけである。
目に見える「結果」にこだわる
医療本来の目的は、
「身体的、および心理的に悩んでいる患者様に対し、医療的な立場から、
この悩みを軽減または解消させること」です。
私は医療そのものが、一点の曇りもなくそこに目を向けるべきと考えています。
臨床の目的をそこに置くならば、臨床家への評価は
「目の前の患者様の症状を、いかに解消させるか?」その一点につきます。
臨床に真摯に向き合い、思い込みを捨て、素直に患者様を診ていれば、
たくさんの疑問や壁にあたります。
私達は、その疑問や壁に仮説を立て、仮説に対して検証を行ってきました。
最前線にある臨床家は、医療の中で最先端にいるべき集団です。
また、臨床家は医療のプロである以上、臨床よって得た技術と知識を形にし、それを後世に受け継いでいかなければなりません。それが多くの臨床家の成長に繋がり、最終的には個々の患者様に還元されることになるからです。
私は、この概念が後世に受け継がれていくと信じています。
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